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2009年8月

「怖い絵 3」

10冊目。今月はコレで打ち止めですが、久しぶりに10冊読めました。来月もこの調子で読めれば。

ということで、今回のご紹介は朝日出版社から出ている「怖い絵 3」(中野京子著)でございます。去年の6月に「2」を読んでここで紹介していますが、1年経っての3の登場ということで、続編となります。

中身はというと、前2作と同じく著者が「怖い」絵を20枚選び、その絵がなぜに怖いのかを背景やら何やらを加えて解説しているというもの。

今回もボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」のようなメジャーな絵もあれば、おどろおどろしいマイナーな絵などなどバラエティ豊富な絵が取り上げられています。作家もボッティチェリやダ・ヴィンチ、ミケランジェリ、シーレのようなメジャーな作家が取り上げられています。

怖い、という切り口はさておき、ピックアップされた絵はどれもすばらしいし、そこに添えられている解説もとても興味深いものです。絵画集として見るにはちと厳しいですが、そのくらいのクオリティはあると思います。残念ながら、シリーズはこれで打ち止めになってしまうようですが、別な切り口でまたこういう本が出て欲しいな、と思うところですね。オススメです。

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「飛行機に乗ってくる病原体 空港検疫官の見た感染症の現実」

9冊目。残り1冊です。

ということで、今回のご紹介は角川ONEテーマ21から出ている「飛行機に乗ってくる病原体 空港検疫官の見た感染症の現実」(響堂 新著)でございます。

中身はというと、これはもうタイトル通り。感染症を引き起こす病原体と病原体を媒介するさまざまなモノが海外から日本へ入ってくる、その状況をつぶさに描いた1冊です。

まぁ、テーマそれ自体については結構前から語られてきたことではあるので、今となっては珍しさも薄いんですが、単純に海外旅行の一般化だけで語られるのではなく、研究用動物の輸入や食料輸入の話にも絡めて書かれ、見落としそうな視点までフォローされているのはさすがです。また、その対策に関しても、日本の不十分な環境が語られていて、感染症に関する全体像が見えるようになっています。

感染症自体に興味がないとまったく面白みのない本でしょうが、最近のインフルエンザの流行などで興味を持ち始めた人には参考になる1冊ではないでしょうか。オススメです。

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「世界は分けてもわからない」

8冊目。残り2冊です。

ということで、今回のご紹介は講談社現代新書から出ている「世界は分けてもわからない」(福岡伸一著)でございます。

この方、新書デビュー作(?)の「生物と無生物のあいだ」や2作目の「できそこないの男たち」がとっても売れたようで、ワタクシも両方読んでここに書いています。どちらも非常に分かりやすく、かつミステリー調の書きようで筆力のある、すばらしい書き手だな、と思っていました。ま、新作ということで、迷わず手に取った次第です。

で、中身はというと、これが難しいんです。前2冊はひとつのテーマに沿って物語風に書かれていたんですが、この本はいくつかの話が分散して載っていて、最後に前2冊と同じような構成のお話が含まれている、という形になっていて、つまるところテーマはどこ? という印象が最後まで拭えなかったんで、中身のお話もちょっと触れにくいというか。

強いてこの本の中心になっているであろう、最後のパートを取り上げるなら、細胞のガン発現メカニズムについて、という難しい話。もっとも、それもまだ完全に分かっている話ではなく、ここで取り上げられているのは、その研究にまつわるスキャンダラスな話。このパートは面白かったんですが、やはり全体のテーマが見えない、逆に言うとここ以外を読んでいるだけに、なぜここにこの話? という感じが否めません。

ついでに言うと、タイトルと最後のパートは密接に関係あるようなんですが、そこもちゃんと書かれているにも関わらず、今ひとつ伝わってこないんですよね。

ということで、前2冊に比べると難解というより散漫な印象のある1冊なので、素直にオススメしにくいのが正直なところですが、全体としてではなく、パートで読むつもりなら、個々の話は非常にまとまっていて面白いので、短編集的な楽しみ方はアリかも知れません。

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「ローカル線ひとり旅」

7冊目。残り3冊でした。書いていきます。

ということで、今回のご紹介は光文社新書から出ている「ローカル線ひとり旅」(谷川一巳著)でございます。テツの本ですね。

と、前フリで書いちゃいましたが、タイトルの通りテツの本です。しかも、ローカル線ときてるので、相当深めなテツの本だと思って間違いありません(笑)

で、中身はというとローカル線を使った旅行(?)指南というのがメインでしょうか。具体的に安い切符の使い方、買い方みたいなところにもしっかり踏み込んで書いていたり、鉄道だけでなく他の交通機関も効率良く使って楽しもう、みたいな話も展開しているので。

ただ、それだけではなく、ローカル線にはロングシート車両はナシだよね、とか車内設備がどうとか、というディープなテツ話も入ってたりするんで、ちょっと一人旅に鉄道を、と考えてる人には不向きな本でしょう。やっぱりテツ向けの本だと思われます。

ちょッと面白かったのは、地方に行かなくてもローカル線の雰囲気を味わえる、というくだり。私鉄の支線や八高線、相模線、久留里線、川越線などなど首都圏にありながら、ローカル区間の存在する(あるいは存在自体がローカル)路線なども紹介されていて、そこを日がな乗りつぶす、というお話も書かれています。必ずしも地方路線がローカル線ではない、という、当たり前だけどちょっと面白い見解でしょう。

テツの本で、結構中身はディープだったりするので、万人向けじゃありませんが、逆にテツなら面白く読めると思います。オススメです。

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「ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足 神経内科からみた20世紀」

6冊目。ストックを勘定していったら、もっとありそう(笑)

ということで、今回のご紹介は中公新書から出ている「ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足 神経内科からみた20世紀」(小長谷正明著)でございます。

内容はというと、サブタイトルの「神経内科からみた20世紀」がまさにそうで、著者はまえがきに書いていますが神経内科医だそうです。で、その神経内科医が残っている映像を中心に、20世紀前半を彩った独裁者などを「視診」した、というもの。

タイトルにあるように、というか、タイトルに書かれなくても有名なヒトラーをはじめ、レーニン、スターリン、毛沢東、F・ルーズヴェルトなどなどが取り上げられています。いずれも神経内科というか神経疾患や脳疾患、循環器系疾患で亡くなってたりするわけですが、あたかもその場にいたかのように描かれています。

と、全体としては非常に興味深い、おもしろい本なのですが、やはり政治家だけを扱うには難があったのか、ラヴェルやルー・ゲーリックのような人も扱われています。個人的には、やはり政治家だけでまとめて欲しかったかなぁ、と思わないでもないところですが。

とは言え、この本で扱われている人の大半は「映像」が残っている人ばかり。それを見て、記録を調べて書き上げていったのでしょうから、推察が含まれるにせよリアリティが違います。初版が10年前と古い本なので、本屋で入手するのは難しいかも知れませんが、興味があればぜひ。オススメです。

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「恐怖箱 赤蜻蛉」

5冊目。ストック変わらず3冊です。が、今日で8月もお終いなので、とっとと書きます。

ということで、今回のご紹介は竹書房文庫から出ている「恐怖箱 赤蜻蛉」(鳥飼 誠・怪聞亭・つきしろ眠著)でございます。夏の終わりの怪談本、といったところでしょうか(笑)

内容はもう言うまでもなく、「超-1」グランプリで発掘された“有能”な実話怪談作家さんの共作本。なので、当然中身は実話怪談です。ま、これまた改めてここで書くまでもないんですが、ワタクシは実話怪談がお好みなので(笑)

構成自体はオーソドックスなもの。淡々と短い怪談が掲載されているスタイルで、個人的にはヘタにひねった本よりこういう方が好みだったりします。作品自体も秀逸なものが多く、ちょっとおかしい話や重い話、不思議な話などバリエーションに富んでいます。

ということで、これだけ巻を重ね、内容もしっかりしたものを送り出し続けているので、怪談本のスタンダードの地位も築きつつあるかな、という印象があります。時期はもうお終いですが、怪談好きならぜひ。オススメです。

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「終戦のローレライ(I〜IV)」

4冊目。ストック変わらず3冊ですが、もう1冊は増えそう。そして明日は30日。……とっとと書きます。

ということで、今回のご紹介は講談社文庫から出ている「終戦のローレライ(I〜IV)」(福井晴敏著)でございます。久しぶりにまた小説です。

この福井晴敏なる人、実はワタクシ初めて読む作家さんなんですが、映像先行で「亡国のイージス」だの「真夏のオリオン」だのは観てたりするので、おおよそどういう書きようをする人か、というのは理解してたつもりでした。もっとも、最近は「機動戦士ガンダム U.C.」とかも書いてたりして、実にいろいろと書ける人なんだな、と再認識しとりますが。

で、この「終戦のローレライ」も一連の軍事系作品のひとつ。ワタクシは観ていませんが、映画にもなっています。というか、あとがきにありましたが、映像ありきで作品化されている小説だったようです。

舞台は終戦間際の太平洋戦域で、細かい時間軸で言うと終戦半月前くらいの短いスパンの中で作品が成立しています。実在の人物も多数出てきてたりしてますが、基本は仮想戦記。欧州戦域で負けたドイツの戦利潜水艦を巡る、駆け引きと戦闘、人間模様が事細かに描かれています。

この本、文庫で4分冊になっている上、I以外は軒並み600ページ超というとても長い小説です。時間軸は実質2週間ちょっとの出来事なので、往々にしてムダな描写を多数詰められがちですが、この小説は実に巧みにストーリーを展開し、最後までとことん飽きさせない作りになっています。エピローグの部分に主人公とヒロインのその後が描かれていますが、そこが何とも切なくホロッときそうなのもいい感じです。

ということで、刊行されたのはそこそこ前だったりするんですが、著者の筆力とストーリー展開の面白さ、小説自体の面白さを存分に堪能できる作品だと思います。ぶっちゃけ、久しぶりにハマった小説を読んだ気がします。ということで、文句なし、強くオススメの作品です。

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「外科医 須磨久善」

3冊目。ストック増えて3冊です。とっとと書かねば。

ということで、今回のご紹介は講談社から出ている「外科医 須磨久善」(海堂 尊著)でございます。

で、海堂 尊の新刊ということは、「バチスタ」シリーズの新刊とも言える……のがいつものことだったんですが、この本はそもそもフィクションではなく、ノンフィクションです。

ノンフィクションなので、タイトルの「須磨久善」なる人は実在の人です。名前も仮名ではなく、実名。この人が何者か、というのは当選知らなかったワケですが、この人こそが日本の心臓外科の第一人者で、日本で初めてバチスタ手術をした人、というのがこの本で語られています。ちなみにノンフィクション、とさっきから書いていますが、正確には著者が取材し、本人が語った内容を再構成しているのと、本の構成からして二部構成に分け、二部には解題として著者自身の言葉でいろいろなことが語られているあたり、厳密な意味でのノンフィクションではないかも知れないです。

この解題のところで語られていますが、バチスタ手術をネタにした「チーム・バチスタの栄光」の成立に少なからず影響を及ぼしているのが須磨久善という人物のようで、ある意味では「バチスタ」シリーズの1冊と勘定してもいいのかも知れません。

フィクションではないので、いつものたたみかけるような内容でも、読ませるギミックもありませんが、非常に濃い中身です。決して大部の本ではないし、割とすぐに読める本なのが逆に物足りなさを感じるかも知れませんが、それでもオススメしたい内容です。

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「『超』怖い話 Ξ(クシー)」

2冊目。ストックも変わらず2冊です。

ということで、今回のご紹介は竹書房文庫から出ている「『超』怖い話 Ξ(クシー)」(松村進吉編著)でございます。夏なんでやっぱり怪談です(笑)

で、こちらは連番というかマーキングというか、何しろ順繰りの呼称が付いているので、「『超』怖い話」の本家本元(?)と言える1冊でしょう。

中身はと言えば、ここしばらく刊行されていた「超怖」シリーズの中でも、なかなかヘビーな1冊でした。収録話数は40話と比較的少なめですが、1話1話は粒ぞろいと思います。特に後半に収録された「鑑賞会」なる話はヘビー中のヘビー。後味が超悪いし、おまけに全体像が今ひとつ見えてこない不気味さもある1話。

という感じで、実話怪談本として秀逸な一冊だと思います。無論、万人向けではありませんが、強くオススメです。

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「『大日本帝国』崩壊 東アジアの1945年」

もう明けて13日ですが、今月の1冊目。ストック2冊です。ま、今月もボチボチ読んでいきます。

ということで、今回のご紹介は中公新書から出ている「『大日本帝国』崩壊 東アジアの1945年」(加藤聖文著)でございます。夏真っ盛りだし、怪談を、と言いたいところですが、先月のうちに怪談の新刊はあらかた読んでまして(笑)

時期的に8月は太平洋戦争がらみの本が新刊として多く出がちなんですが、この本もその一環と言えばそうなんでしょう。ただ、この本は視点が全然違っていて、タイトル通り「大日本帝国」の崩壊をテーマにしています。なぜ負けたのか、敗戦処理は、というような、主に日本国内でのお話ではなく、大日本帝国の版図だった東アジア全域、ミクロネシアあたりの45年8月15日以降が語られています。

序章は当然日本国内の話で、ポツダム宣言の裏側の話から受諾に至る指導部の混乱などが語られています。が、本筋はやはりそこではなく、朝鮮半島や満州、台湾、ミクロネシア、北方4島といった大日本帝国領・満州国・中国などが8月15日以降どんな運命をたどったか、というところにあります。

ある程度は知識として持っていたものの、敗戦を境に何が起こっていたのか、というのはとても興味深いところで、読んでいくと実は敗戦直後は平穏だった、というようなことも分かります。日本が敗戦国として、帝国領土を失い、統治能力を失ったところから旧帝国領の大混乱が始まる、という構図が見えてきます。結果として、朝鮮半島は分断され、中国は台湾と枝分かれしてしまい、満州国はソ連の参戦・侵攻とともに悲惨な末路をたどります。

ということで、よくある戦争本とは一線を画し、日本の敗戦が東アジアの均衡に何をもたらしたのか、がよく分かる良書だと思います。強くオススメです。

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